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「超歌舞伎2022 Powered by NTT」制作記者会見レポート特集

「超歌舞伎2022 Powered by NTT」制作記者会見レポート

2022年7月6日(水)、「超歌舞伎2022 Powered by NTT」の制作発表会見が行われた。同公演は、8月4日(木)の福岡を皮切りに愛知、東京、京都の4都市で公演を行う。会見では、主演の中村獅童とその長男・小川陽喜、共演の澤村國矢が登壇。また、中村とともに主演を務める初音ミクはビデオメッセージというかたちで登場。それぞれが舞台にかける意気込みを語った。

「ニコニコ超会議」から飛び出し、初の4都市公演に挑む「超歌舞伎2022」

中村獅童・小川陽喜・澤村國矢

会場に中村獅童が一礼して椅子に腰かけると、後を追うように小さな人影が舞台袖から現れた。中村の長男・小川陽喜だ。父と揃いの紋付袴を身にまとい、同じように一礼して、自らの席に着く。最後に「超歌舞伎」の初演から中村の横で公演を盛り立ててきた澤村國矢も登壇。記者会見が始まる。

「超歌舞伎」は、2016年に幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議2016」の一企画として初演が行われた。古典歌舞伎にNTTが誇る最新テクノロジーを融合させたド派手でライブ感のある演出は観客の心を鷲掴みにし、根強いファンを形成。「ニコニコ超会議」の恒例演目として、毎年会場に熱狂の渦を作り出す。


中村獅童

2019年には京都南座で初の劇場公演も行われ、「ニコニコ超会議」の中心的なファン層であるサブカル好きとは別の古典歌舞伎ファンも取り込み、さらに注目を集めている。

中村は「今回は初の試みとなる4都市での劇場公演ということで、大変嬉しく思っております。長男の小川陽喜ともども、よろしくお願いします」と挨拶。その言葉に続いてマイクを握ったのは陽喜だ。「小川陽喜です。よろしくお願いします」と、若干4歳とは思えぬ堂々たる立ち振る舞いに、会場の記者はため息を漏らす。続いて挨拶をした澤村は「本公演はもちろん、リミテッド公演では主演を務めます。そちらも注目していただけたら」と、熱を込める。






中村獅童・初音ミク

さらに、「超歌舞伎」のもう一人の主役である初音ミクからもビデオメッセージが。「中村獅童さんをはじめ、役者全員がパワーあふれる演技を披露します。想いのつまった公演を劇場でご覧ください」と、笑顔で語った。

理屈なしで楽しめる! 古典歌舞伎のコアファンも唸らせる「超歌舞伎」の魅力

中村獅童・初音ミク

「超歌舞伎」の見どころについて、中村は「理屈なしの楽しさ」であると語った。「古典歌舞伎と聞くと、歌舞伎に馴染みの薄い方にとっては難解で敷居が高いようなイメージがあると思うのですが、そこにバーチャル技術が融合することで、一気にハードルが低くなる。ペンライトを思いっきり振って歌舞伎を楽しむなんて、『超歌舞伎』でしか見られません。お祭り感覚で、自由に力いっぱい楽しめるのが『超歌舞伎』最大の魅力です」。

一方、コアな古典歌舞伎ファンにとっては「バーチャルの融合」という部分にクエスチョンが生まれるのは想像に容易い。中村自身もその懸念はあったが、京都南座での公演後、その不安は取り払われたという。「特に印象的だったのは公演後『こんなに楽しいなら、次は孫を連れて来よう』という声が聞けたこと。それだけでも嬉しかったのに、別の日には本当に孫を連れてきて、満面の笑みでペンライトを振っていた。これは本当に手ごたえを感じましたね」。常に「伝統と革新」を追い続ける中村にとって、まさに古典歌舞伎の新しい姿を目の当たりにした瞬間だったと言える。

中村獅童

もちろん、バーチャル技術も年々進化を続けている。澤村は「今回はボリュメトリックという技術で、私たち演者がスクリーンの中に入り込んで立ち回るという演出があります。リアルとバーチャルの融合を、今まで以上に感じられると思いますよ」と語った。また、演目の構成については「古典歌舞伎好きの方なら、パッと見ただけで『ああ、この場面ね』と分かるようになっています」と、中村。まさに、古典歌舞伎ファンもサブカルファンも魅了する新しいエンターテインメントというわけだ。

小川陽喜の非凡なる才能を周囲も意識。父子の微笑ましいやり取りも

小川陽喜

「超歌舞伎」の魅力もさることながら、記者一同の興味は小川陽喜にも集まっていた。小川は2022年4月の「ニコニコ超会議」で「超歌舞伎」に初御目見え。中村曰く、小川本人が出演を希望したという。

中村は「同じ舞台に立つ以上、私と陽喜は役者としてライバルです」と語るも、小川は「ライバルじゃない」と返答。会場の笑いを誘った。中村は苦笑いを浮かべながらも「私が大人げないんでしょうね。勝負ごとで『大人だから負けてあげる』という発想になれない。そんなわけで、ふたりでしょっちゅう喧嘩して、陽喜は大泣きする。僕はぷいっと不貞腐れる。妻はいつも呆れています(笑)。でも、喧嘩したあとは必ず陽喜が先に謝ってくれるんです。そんなところは僕よりも大人っぽくてすごいなと尊敬してしまいますね」と、誇らしげに語る。




澤村國矢

澤村も陽喜に対しては「実際に、今年の1月から見栄を切るのがとてもうまくなっていて、日々成長を感じます。将来が楽しみですね」と語った。大人びたエピソードに事欠かない小川であったが、「好きな俳優は?」という記者の質問に対しては「パパ」と、歳相応のかわいらしい回答。微笑ましい一面も見せた。

7年越しにかなった悲願の全国進出。伝統と革新を追いながら、未来に向かって走り続ける

中村獅童

2016年の初演から7年が経過した今年、全国4都市での公演に挑戦する「超歌舞伎」。「初演当時から全国公演は意識していたか?」という記者の質問に対して中村は「いつか進出してやる、という意気込みはありました」と答えた。「当時は『初音ミクと歌舞伎で何やるの?』と、色眼鏡で見られていました。けれども、毎年あきらめずに公演していたことで、今まで古典歌舞伎と接点がなかったサブカル好きの若者たちが少しずつファンになってくれた。まさに、この7年は彼らが『超歌舞伎』を育ててくれたのだと感じています」。




中村獅童

そんな中、京都南座での公演が決まったときには「時代が動いた」と感じたという。「人にそれぞれ生まれ持った使命があるとしたら、『伝統と革新を追い、多くの人を振り向かせる』ことが中村獅童の生き方だと思っています。古典歌舞伎のいいところは残しつつ、時代に合わせて必要なものを取捨選択する。そうして歌舞伎や歌舞伎界を変革して、時代を動かしていきたいんです。『超歌舞伎』も、もしかしたら100年後に古典歌舞伎として残っているかもしれません。それを想像すると、楽しいですよね」と想いを語った。

また、『超歌舞伎』では本公演の後に配役を一新して同じ演目を行う「リミテッド公演」がある。「リミテッド公演は、お弟子さんの力試しの場。『頑張ればいい役ができるんだ』という希望の星になれたらと考えています」と中村。今回、リミテッド公演で主演する澤村は「私自身、一般家庭の出なので、歌舞伎の大舞台の中心に立てたということは、夢が現実になったということなのです。全身全霊を込めて取り組んで、同じく歌舞伎役者を目指す人たちが夢見ることができる公演にしようと思います」と語った。


中村獅童

最後に、中村は今回の公演について「色々と語ってしまいましたが、実際に観ていただくことで『超歌舞伎』の楽しさを感じていただけると思います。古典歌舞伎好きの方も、サブカルチャー好きの方も、どちらにも楽しんでいただけるはず。ぜひ、会場に足を運んでください」と締めくくった。